京丹後

『風景泥棒 3 -Landscape Rippers 3-』4年間を通して京丹後の多様な風土をリサーチしたアーティストたちが、アートを通じて風景の見え方を変化させる行為=「風景泥棒」をテーマに、自身の身体で盗んだ京丹後の風景を作品に落とし込み、鑑賞者へ京丹後を再提示する試みを展開しました。
京丹後 リーフレット

2021
10.1[FRI]-11.7[SUN]

金・土・日・祝、11.4[THU]に公開10:00-17:00※本展覧会は閉幕いたしました。

ARTISTアーティスト

※狩猟鳥獣の解体作業を撮影した作品が登場します。ご注意ください。

《岬のサイクロプス 2021》

本作は2018年より取り組んでいる、経ヶ岬灯台に関する連作の最終作品です。現代では無人となり、数も減っていく灯台自体を神話の巨人に擬え「岬のサイクロプス」という同タイトルで3年間制作をしてきました。 経ヶ岬灯台にアクションを起こす作品から始まり、灯台と周辺の軍事的背景、灯台が建設された厳しい気候や地形についてなど、灯台を通して見えてきた京丹後の近代史に焦点を当ててきました。制作3年目となる2021年は今までのリサーチに加え、過去にあった灯台など海の環境に焦点を当てた新作を展示しました。4年間の時間をかけなければ見えてこなかった物事に着目しました。

SIDE CORE

2012年より活動開始。メンバーは高須咲恵、松下徹、西広太志。ストリートカルチャーを切り口に様々なアートプロジェクトを展開している。「風景にノイズを起こす」をテーマに、都市や地域でのリサーチを土台としてアクションを伴った作品を制作。全てのプロジェクトは、公共空間における視点や思考を転換させ、表現や行動を拡張することを目的としている。近年参加した主な展覧会に「生きている東京展」(2020、ワタリウム美術館、東京)、「under pressure」(2021、国際芸術センター青森, 青森)など。

《みえる》

4年間を通じ、京丹後へ訪れる度にこの地域も自分自身も変化があった、というかここ2年は全てが目まぐるしく変化していた。そういう変わり続ける事柄とは対照的に、ここの空と山と海は初めて訪れた時から今日まで変わることなく鮮烈だった。我々は普段からあまりに多くを観て・視て・診て・看て、結果、ありのままそこで起きていることが「みえる」機会を失っている。「風景を観る」ではなく「光景がみえる」ために、作為を施す以前のここに宿っている事実のために、太陽光の反射が外景として映り込む装置と、太陽光を収斂して発火させる装置を制作した。

石毛 健太ISHIGE Kenta

美術家、エキシビジョンメイカー、Urban Research Group(URG)運営。1994年神奈川県生まれ。 2018年東京芸術大学大学院修了。出身地や身の回りの物事について考えていることが多い。主な 個展に「アイオーン」(2020)。主な企画に「変容する周辺 近郊、団地」(2018)「working/editing制作と 編集」(2020)。

《降り積もる影》

僕が今住んでるのは東京だけど、例えば今日人が一人いなくなっても、そこは微動だにしない。だけど、僕が4年通っている京丹後の味土野という山奥の村は、現在移住者の方2人だけが住んでいる場所で(昨年は3人だったけど1人出られた)一人の足跡が重い。去った人も今住む人もそれぞれの人生の決断だけど、そこで生きた跡形はやがて消え去ってしまう。僕はそれが名残惜しくて仕方がない。できることならあなたを引き留めたい。積もる話があるわけではないけど、消え去ってほしくない。 それは記録としてでなく、消えない影が、そこに降り積もっていてほしい。

田中 良佑TANAKA Ryosuke

1990年 香川県生まれ。東京都在住。東京藝術大学大学院修士課程美術研究科壁画専攻修了。 「社会の中のそれぞれの『私』」という言葉を大切に、この世界で生きるそれぞれの人生の可能性を探る。「Exultation is the going」(東京•2020) 「hello/ENTER」(シンガポール/東京•2020)「working/editing 制作と編集」(東京•2020)「Nonsense Agency 」(台湾•2019)「As a flower」(個展/東京•2019) など。

《for mi》

刈り払い機で、草を刈っている。刈りやすかったり刈りにくかったりする。臭かったり臭くなかったりする。大きな岩やきれいな花は自然と避けられていく。歩けなかった場所が歩けるようになっていく。こんなに広かったんだとか思ったりする。色褪せたボールや毛布のようなものが見つかる。4年の間、あるいはもっと長い間、見過ごしていたものたちが現れてくる。 私はここでただ、名前のない日々を過ごした。気づくと、miがいたんだ。こうして、この場所で出会えることを知っていたかのような。普通の感じで。

鷲尾 怜WASHIO Ray

1995年 東京都生まれ。制作の極私的あるいは社会的実践について考える。「クロスポイント」(W+K+ Gallery・2017)「セコンドハンド」(アキバタマビ21・2018)「ぼくらとみんなは生きている5~持続可能な愛のステージ~」(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA・2019)「ぼくらとみんなは生きている10~豚の旅ともいいきれない~」(四谷未確認スタジオ・2020)

《15》

京丹後の海岸道路沿いに建つ「最北子午線塔」には、日本標準時刻と世界標準時刻であるイギリスにあるグリニッジ天文台の時刻が表示されている。そこを訪れた際に、携帯電話をたしかめると、塔の時刻が15秒ずれていることに気がついた。今や携帯電話で正確な時刻が分かるにも関わらず、記念碑的なオブジェとして、当然正確だと信頼を寄せたその時刻がずれていたことから、当たり前のように規定された時間で生きる自分に気付かされた。本来揃うはずのなかった、かつての「個人」の時間感覚に思いを馳せ、世界と15秒ずれていた京丹後の港で時を刻んだ。

BIEN

1993年東京都生まれ、ドローイング表現を基礎とし絵画や彫刻など多様なメディアで作品を制作。アニメのキャラクターなどフィクションが生み出す形、文字や記号などの表象に着目し、それらがもつ形や意味を解体/再構築する抽象表現を展開している。主な個展に、18年「WOOZY WIZARD」(BLOCKHOUSE、東京)21年「DUSKDAWNDUST」(PARCEL,HARUKAITO by island、東京)など。
Profile Photo:Kazuki Shibuya

《ドルフィン・マン》

ここ京丹後にはイルカが稀に現れるらしい。作品タイトルの「ドルフィン・マン」とは会場にある小屋に住んでいる男の通称である。近所の人から勝手にそう呼ばれている「ドルフィン・マン」とは一体何をしている人物なのか。誰も詳しく知らないが、仕事なのか趣味なのかイルカに纏わる何かをしていることは間違いない。この作品は学生時代を京丹後で過ごしたNTsKiが、海沿いに住む髭の生えた謎めいた人物に好奇心を抱いていたという実体験がモデルになっている。「ドルフィン・マン」は世界中に点在していて、あなたの街にも住んでいるかもしれない。

DAISAK

1986年、京都生まれ京丹後在住。京都精華大学大学院修了。地球上に存在する全ての物を吸収し、 主に陶芸技法を使い器や置物などNEWOLDな焼き物を製作している。 個展「スペーシースムージースムーズ」(VOU、京都、2020)「SLEEPING FINAL STUFF」(BAF STUDIO、東京、2020)

NTsKi

音楽・写真・映像を通じて、場所や時代を超えた記憶や気配を具現化するアーティスト。楽曲・MV等をセルフプロデュースするだけでなく、配信や流通の管理もアートとして捉え、音楽とアートのメディアを横断した共感覚を切り開いている。2021年ファースト・アルバム『Orca』を米オハイオのレーベル〈Orange Milk〉/〈EM Records〉よりリリース。主な活動に2020年「大京都」(京丹後市)、2021年「4面鏡 / Quad Mirror」(PARCEL)などがある。

川勝小遥KAWAKATSU Koharu

1990年京都市生まれ。東京造形大学サステナブルプロジェクト専攻卒業。 東京を拠点にしながら、京都府宮津市でアーティストのレストハウス“万年倉庫”、自身の素質を知る社交場“バナナナイト”、VR SNSで個を謳歌する座談会“Bar I am I.”を主催しつつ、アートイベントを劇場という感覚で手掛けている。また、現代社会における優劣の定義をテーマに、発光装置や既製品を用いた渋アダルトポップな世界観でインスタレーション表現している。

主催

京都:Re-Search実行委員会(京都府、八幡市、京丹後市、南丹市、与謝野町)

問合先

京都:Re-search実行委員会事務局

〒602-8570 京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

075-414-4287(受付:平日08:30-17:00)

bungei@pref.kyoto.lg.jp